(ガク)
アンパンマンは君だぁー!
「アンパンマンは、ワルモノ(悪者)かもしれないな…」
TVのアンパンマンを見ていた時に、ガクがポツリとこういった。
僕は思わずガクの顔を見てしまった。実を言うと僕はこういう考え方は嫌いじゃない。絶対的な正義を疑って見るのは大事なことだし、そもそも『絶対的な』正義などどこにも存在しないのだ。
声高に『正しいこ』とを叫ぶ人間を僕は信用しない。
正しいことを行っているつもりでも、どこかで自分は間違っているんじゃないかと思う気持ちがないと、それは根本的に誤りだとさえ思う。正しいことを言う時には人を傷つけないように慎重に言葉を選んで発言しなければいけない。
ガクの上記の発言に触発されて、そんな事を数秒のうちに考えていると、ガクはその説明をしてくれた。
「だって、アンパンマンは、『パンチ』とか『キック』をするんだよ。イケナイんだぁー」
「…………。」
なるほど…そういう意味かぁ…
インド独立の父マハトマ・ガンジーの非暴力主義のことを言っているのか、わが子ながらなんと聡明な子どもだろう。
…って、そんなわけはないかぁー。
たぶん幼稚園で言われている口マネなんだろうなぁ。
ガクのクラスはとりわけヤンチャな男の子が多くて、パンチだのキックだのやって先生によく叱られている。入園当初は当惑していたガクも、最近では負けずにやり返しているらしいから、インドのガンジーとはほど遠い存在だ。
アンパンマン、新しい顔だよー
ジャムおじさんのパン工場の裏手には、廃棄されたアンパンマンの顔が死屍累々と転がっているに違いない…