(ガク)
もう、いやだッ!
最近、ガクは気に入らない時によく、「もう、いやだッ!」という。
ただちにゲームをしてもらえなかったり、自分が見たいと思ったDVDがすぐに映してもらえないと、ガクは「もう、嫌だッ!」というのだ。
「もう…?」
自分の思うようにならないことが我慢できないのは分かる。でも、もう嫌だという言い方は少しおかしい。
それまで何回か我慢を重ねて耐えていた実績があって初めて、「もう…」という感慨になるのならわかるが、ガクの感覚ではそれをすっ飛ばしていきなり「もう、嫌だッ!」らしいのだ。
その言葉の使い方は間違っている。
何度も理不尽な我慢を強いられて、耐えて耐えてきたのだけどもう我慢の限界、堪忍袋の緒も切れた、もはやこれまで……とのッ、殿、殿中でござるッ!殿中でござるぞッ!…というくらい辛抱して初めて、「もう、いや」と言っていいのだよ、と諭しているのだが、この3歳児はそれすら聞く耳をもたずに癇癪をおこしている。
それは、「ああ嫌だ、すぐに嫌だ、いま嫌だ、ただちに嫌だ」であって、「もう、嫌だ」ではない。