(ケイタ)
兄ぶった物言い
ケイタは弟の面倒をよく見てくれる。馬になって背中に乗せてあげたり抱き上げたりガクの相手をしてよく遊んでいる。
遊んでいるうちに自分のほうがムキになっていることもままあるが、よく相手をしてくれるお兄ちゃんのことがガクも大好きらしく、兄の言うことには神妙に聞いている。まあ、半分も理解していないようだけど…。
肩もみ
夜僕がカミサンの肩を揉んでやっていると、そばで見ていたケイタが「僕ももんでやるよ」 とやさしいことを言った。
ケイタは最近握力がついてきて、気持ちいいというレベルの肩もみをしてくれるのだ。
「ケイちゃんはやさしいね、ありがとうね」
褒めれれて照れくさそうなケイタは、隣に座っていたガクに言いきかせるように、
「いいか、ガク、大きくなったらお母さんの肩をもんでやるんだぞ」
ちょっと偉そうだけどお兄ちゃんらしい言い方で諭している。真冬の雪の中から筍が生えてくるくらいの孝行息子に両親は思わずハラハラと落涙してしまった…というのはウソだけど、時々ケイタはこんなやさしいことを言うのだ。
クリスマス会
「ガクちゃん、明日は幼稚園のクリスマス会だよ。サンタさん来るかな」
ガクの体験教室の前日、母親がガクにそう話していると、ケイタが口をはさんできた。
「がく、いいか、幼稚園のサンタは本物じゃないんだぞ、あれは幼稚園の先生がやっているんだぞ」
その幼稚園を今年卒業した兄は偉そうに弟に説明していた。
本物のサンタの存在は信じて疑っていないくせに、さも「俺はしってるんだぜー」という物言いがおかしい。
それでも、翌日幼稚園で先生がふんするサンタを見たガクはびっくりして固まってしまったらしい。本物だと思ったのだろう。
それまで一人で騒いでいたのが急に静かになって、
「サンタさん…きた・・・ ネェ・・・」 と小さな声で何度もつぶやいていた。
たぶん前日の兄の言は理解してなかったかきいてなかったようだ。