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(ケイタ)
良いところと悪いところ 「オレはダメ駄目な、ゲームしか出来ないバカ馬鹿なやつなんだ…」 時々ケイタはこんなことを目に涙をためて言い始める。たいがい母親や僕に叱られた時なのだが、叱られたことが自分の全否定に繋がってしまうらしいのだ。 普段は叱られると、反発して逆に怒り出し小憎らしい言動をよくするくせに、時たまこんな気弱な気持ちになってしまう。 子どもを叱る時はその行為だけを叱るようにして彼の存在を否定するような言動はよくない。そんな叱り方は僕もしていないし、母親もガミガミ怒るようなタイプではないのだけど… ケイタは叱られたことそのものに気が弱くなってしまう時がたまにあるらしい。 とはいうもののこんな場合でも数分もするとケロリとしているので、この「ダメ、ダメ」発言はいったいなんなのだろうと思う。 おそらく、子どもならではの万能感やプライドの高さの裏返しで、落ち込んだ時に極端な気持ちになってしまうのだろう。両極端な傾向、オールorナッシング的な考え方は少しずつ直していかなくてはと思う。 人間の存在はもっとあいまいなものだ。 よい所もあれば悪いところもある。みんなそうなんだよと、先日寝る前に蒲団の中で話して聞かせた。 その時も「オレはダメだー」というようなことを言い出したのだ。 誰だって人間はみんな長所もあれば短所もあるんだ。でも悪いところを少しずつ直していって良いところを伸ばしていく姿勢が大事なんだということを小学1年生にも解るような言葉で説明していた。 「ケイタのいいところは?」 と聞いてきたので思いつくままに羅列する。 「ケイタは明るいし、元気だ、算数が得意、性格がやさしい、顔がかっこいい、速く走ることが出来る、自転車に乗るのが上手だ、なわとびの二重跳びが出来る、弟の面倒をよくみてくれる、お母さんの手伝いをよくする、何でもたくさんよく食べる、ゲームやパソコンが上手…」 「悪いところは、短気なところ、悪い言葉を時々使うこと、箸の持ち方…かな…」 その悪いところ、短所を少しづつ直していけばいいんだよ、と言いきかせているうちにケイタは寝てしまった。 ケイタのいいところを数え上げながら、ふと思った。僕はこの子の良い所をどれくらい知っているだろう。どれくらい長所を理解してあげているだろう。 人間は誰でも良い所もあれば悪い所もある。それは自分自身も他の人も同じだ。 他人を見るときには、どうしてもその悪い方ばかりに目が行きがちだけど、他の人を判断する時には双眼鏡でその両方を公平に見るように心がけた方がいい。悪い方だけをみていると自分以外の人間と付き合っていく上で息苦しい気持ちになってしまう。相手の短所ばかりが目に付くというのは辛いものだ。 欠点の方が目に付きやすいという性質を意識して、悪い方には少し目をつぶるくらいの気持ちでいて初めて双眼鏡の両目のピントが合うのだと思う。相手の良い面を意識していると、自分の心も安らかになるし、相手にもそれは伝わるだろうから人間関係もスムーズにいくようになる。そして様々な人との付き合いの中で「こいつにもこんないいところがあったのか」と思うことが出来る瞬間というのは人生の中でも数少ない幸せな一瞬だ。 というようなことを小学1年生にどのように伝えたらいいのだろう、ケイタの寝顔を見ながら僕は考えていた。たぶんそれは言葉で説明しても本当の意味は伝わらないだろうし、僕自身がケイタのよい所に注目してあげることでしか伝わらないような気がした。
by tonjies
| 2007-01-27 16:22
| 豚児1号 ケイタ
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