(ケイタ)
間違った言葉づかい
最近ケイタは自分のことを『オレ』という。
これまで一人称は自分の名前だけだった。
「ケイタはねぇー」と自分のことをいっていたのに、いつの間にか「俺はなぁー」という言葉も半々で使うようになってしまった。
「ボク」というように言っているのだが、直そうとしない。「オレ」という言い方はいつも観ているアニメ番組で覚えてしまったようだ。
だが、ケイタの「オレ」はどういうわけかイントネーションが逆になっている。
「オーレはなぁー」とナマった口調なので聞いていると少しおかしい。
近頃のアニメの主人公はほとんどが『俺』『お前』だし、『馬鹿』『テメェ』などの悪い言葉も多い。状況に応じて使い分けることが出来ればそれでもいいのだが、言葉を覚えている最中の幼稚園児には無理のようだ。
さらにケイタの言葉を真似して一歳のガクまでが、そんな言葉をまっ先に覚えてしまいそうだ。
ケイタは言葉の使い方も少しおかしいところがある。
僕と『戦いごっこ』をしていて負けそうになる時に必ずケイタはこう言うのだ。
「よくも、やってもらったなぁー」
どうやら「やってくれたなッ」と言いたいらしいのだが、「もらう」と「くれる」では似ているけどちょっと意味が違う。
殴られても「やってもらった」では「そうか、やってもらったのか、よかったねぇー」になってしまうではないか。
「よくも、何々…」という言い方もよく間違えている。先日ガクと一緒に遊んでいたケイタが、カミサンに向かってしみじみとこう言ったという。
「ホント、ガクってかわいいよなぁー。ママ、ガクを産んでくれてよかったよぉー。よくも、まぁ、こんなにかわいい子を産んでくれたよなぁー」
ケイタに褒められちゃったとカミサンは言っていたけれど、これも言葉の使い方がちょっと違う。