(ケイタ)
発熱
先週からケイタが熱を出している。
インフルエンザではないようだけど、39度以上の熱が二晩続いた。39度ぐらい熱があると、朦朧とするのか、薄目を開けてうわごとのようなことを言い続けていた。
「このボタンを押さないといけないんだ…」
何回もそう言って母親の頬に指を当てていた。どうやら、TVゲームのことらしいのだが、目を開けているので寝言ではないし、添い寝していた母親は一晩中不安だったという。
普段は少しもじっとしていない子で、部屋の中でもところせましと走り回り飛び跳ねているケイタがぐったりとしている様子はいかにも可哀想だった。
昼間でもあまり動き回る元気がないらしく、自分で横になってじっとしている。得意のおしゃべりもほとんどしないで、遊んでいる弟の姿をみてかすかに笑っていた。
「ケイタも遊びたいなぁ…」
つぶやく言葉にも力がないようだ。
そんなつらい目にあっているというのに、ケイタは医者から貰ってきた薬を嫌がって飲もうとしない。
それでも粒の薬は何とか飲めるようになたのだが、粉薬はどうやっても飲んでくれない。ゼリー状のもの溶かし込んでも、オブラートに包んでみても、はなから嫌だと決め込んできるらしく、無理に飲ませても吐いてしまうのだ。
薬を飲ませるたびに泣き出すケイタを宥めるのが一苦労だ。
風邪が流行っているらしくケイタを連れて行った小児科はひどく混んでいたという。何時間もかけけて薬をもらってきたというのに、ケイタが飲んでくれないのでは意味がない。
僕のいない時間だったので後から聞いた話なのだが、薬の時間のたびにくりひろげられるこの争いに、「疲れた…」 とカミサンがこぼしていた。
ここ2日ほどケイタの熱も少し下がってきて、37度台になった。そうなるとゲンキンなものでもう外に出て遊びたがったりするから不思議だ。
まだ微熱があるケイタをおいて、庭で弟のガクを遊ばせていたら、窓からのぞいていたケイタが半べそをかいていた。