(ケイタ)
ホワイトデー
先月のバレンタインに、ケイタはクラスの女の子からチョコをもらって帰ってきた。
ケイタが車好きなことを知っていてくれたのだろう、小さな車の形のチョコレートだった。
かわいらしい字の手紙まで入っていたので、『○○ちゃん』がくれたということはわかったが顔がわからない。
どの子がくれたのかクラスの写真を見せながらケイタに教えてもらった。
最近では幼稚園児までがこんなことをやっているのかと思ったけど、母親が昨日お返しのキャンディを持たせてやったらしい。
「○○ちゃんに、お返ししたかぁー」
とケイタに聞いた。
「わたしたー、わたしたー。」
「○○ちゃん、何か言っていたか?」
「わすれちゃったよー」
ケイタは気のない返事をしていた。
ケイタはチョコレートの類は一切たべないので、この車のチョコもケイタではなくて母親が食べてしまった。
ケイタのいる時に一緒にあけて食べていたのだから、母親が取ってしまったわけではないのに、ケイタは、そのネタをふざけてヒロシのギャグにしていた。
「ケイタです……バレンタインのチョコを……ママに横取りされたとです……僕がもらったのに…一口も食べていません……ケイタです……」
ケイタに初めてチョコをくれた○○ちゃんは、この春に新潟に引っ越してしまうので、ケイタと一緒の年長組にはなれないらしい。
そのお別れ会が、今日幼稚園であったという話をケイタがしていた。