(ケイタ)
ガンつけてんじゃねぇぞッ!
最近ケイタはよく人のことをにらみつける。
何か自分の気に入らないことがあると、怖い顔をしてにらんでいるのだ。
本人は『ガン』を飛ばして威圧しているつもりなのだろうが、幼稚園児のガン飛ばしにたじろぐものは誰もいない。
でも、「その怖い顔はやめて」と母親がよく言っている。
どうでもいいが、家のなかでガンを飛ばすのはやめてほしいものだ、と僕は思う。
先日僕が赤ん坊のガクをあやしている時のことだ。
お座りが上手くできないガクが前につんのめって泣き出した。
すぐに泣き止むようなことだったのに、どういうわけか側で遊んでいたケイタが急に怒り出した。
「お父さんがやったのか?(怒・・・)」
お父さんがガクの泣くようなことをやったのかと彼は言っているのだ。弟がいじめられているとでも思ったのだろうか、ケイタがそう言って僕にガンをつけてきた。
お父さんがガクをいじめるわけがないだろ、と言ってもケイタはなかなか信用していないようだった。
この前幼稚園からケイタが目の上に青タンをこしらえて返ってきた。パンチをまともに受けたボクサーのようだ。廊下でふざけていてお友達とぶつかったらしい。
その顔でガンを飛ばすケイタは少し怖かった。
でもガンつけて怒っている時も、しばらくするとその怒りに自分で耐え切れなくなって目にいっぱい涙がたまってくる。放っておくと「うぇーん・・・」と泣き出すことがよくある。
やっぱりケイタも幼稚園児だったようだ。