考える人
眉間にしわを寄せて渓太がウンチすわりをしていた。
これは僕のいない時のことだったので、かみさんとババの目撃談なのだが、険しい顔をした渓太が座ったまましばらく動かなかったらしい。
「どうしたの?ウンチしているの?」と聞いても渓太はじっとしたまま動こうとしない。
ウンチだったら机の下に逃げ込んで隠れてしまうので、どうやらウンチではないらしい。
眉間にしわを寄せたままの顔をのぞきこむと、渓太がポツリと言った。
「ケイタは考え事をしているんです!」
3歳半の息子にそう言われてかみさんとババはびっくりしてしまった。
「ケイタはねぇー、考え事をしているんです!」
邪魔をしないでくれと言わんばかりの口調だ。
眉間にしわを寄せて考え事をしている3歳児なんているんだろうか。
とてつもない哲学的な難しいことを考えているような顔をしていたという。
「何を考えているの?」と聞いてもなかなか渓太は答えなかった。
天上天下唯我独尊とでも言い出すような雰囲気をかもし出している。
世界情勢や環境問題でも考えているんだろうか、と思っているとしばらくして渓太
がポツリと言った。
「ミカンにしようか…イチゴにしようか…」
おい!眉間にしわまで寄せて考え込んでいたのは食い物のことかいッ!
真剣に何を考えているのかと思ったら、どうやらオヤツに何をもらおうか悩んでいたらしい。
そこまで悩まなくても…と思うぞ。