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渓太と玩具   
渓太と玩具   



ケイタがおもちゃ箱をひっくり返して何かを探している。いや最初は何かを探すつもりだったのかもしれないが、車のオモチャやビー玉が、ガラガラッーガッシャーンと散らばるのが面白くてわざとやっているようだ。
部屋中に渓太のおもちゃが散らばって足の踏み場もない…

こういう状態をケイタは好む。部屋のあちこちに自分のお気に入りのおもちゃがあるのがうれしいらしい。
僕も部屋が散らかっているのはあまり気にならない。塵ひとつないチェックインしたばかりのホテルの一室のような部屋(ご丁寧にシンメトリーになっていたりする)は、かえって息苦しくて嫌いだ。
ある程度散らかっていたほうが心が安らぐ。(あくまでもある程度ですよ、あるていど…)
だが、我が家にはただ一人そうは思っていない住人がいて、僕はいつもケイタと一緒に叱られていたりする。

ケイタはおもちゃ箱にあふれんばかりのオモチャをもっている。実はもうすでに溢れていて、遊ばなくなったものから別の箱に入れられて2階の押入れに片付けられてしまう。
与えすぎだ、とは思うもののいつのまにかこんなに増えてしまった。
その多くは車や電車だ。
一歳を過ぎたころからトミカのミニカーコレクターになった渓太は、よく部屋の端から端まで一列に車を並べて一人で遊んでいた。



先日、渓太は消防車のオモチャをもらった。ミニカーではなくてチョッと大きなハシゴ消防車だ。このオモチャは実によく出来ていて乾電池を8個も使い、スイッチを入れるとサイレンを鳴らしながら走り回った。そして定期的に止まるとドアが自動で開き、ハシゴが伸びて消防士の人形がそれを上り下りする。

ほう、よくできているなぁ、と思った。

だが、渓太は最初のうちこそ面白がってその消防車を走らせて遊んでいたが、数日すると飽きてしまったのか、あまり見向きもしなくなった。

どうしてだろう、と考えてふと気がついた。
この消防車のオモチャは玩具として完成されすぎているのだ。すべてが電動で動き小さなモーターがドアの開閉から人形の動きまでを制御している。
遊んでいる子供が自分でドアをあけることも人形を動かすことも出来ない。
そう、この玩具は「勝手に動く消防車として」でしか遊べないのだ。子供が空想したり想像してごっこ遊びをする余地が残されていない。
おそらくこのオモチャを作った人は頭がいいのだろうけれど、肝心の玩具としての大切なことを忘れている。
それは子供だった時には僕もみんなも持っていた想像力だ。木の切れ端を船に見立ててみたり、スポーツカーに見立てて遊ぶ…。木の切れ端ならばその空想の世界に入っていくことが出来るが、完成され過ぎた消防車ではそれが出来ない。

動かないミニカーでも渓太は爆音を立てながら遊んでいる。
絨毯の模様を道路に見立てて、車を少しずつ動かしながら、「ランボルギーニかっこいいですねぇー」と言っている渓太を見ながら、僕はあの消防車を作った玩具メーカーのことを考えていた。

玩具メーカーは全て分かっていてこういうものを作っているのかもしれない。子供のことを分かっていないんじゃなくて、その親をターゲットにこういう高価な、そして一見面白そうな(実は子供の想像力を奪っている)オモチャを作っているのだろうか。

愚かなのはそういうオモチャを子供に買い与え続けている大人の(親の)方だ。
玩具の消防車が僕には大量消費社会の縮図のように思えた。

そんなことをぼんやりと考えていると、傍らで渓太が今度は赤い積み木をポルシェのつもりで走らせていた。一生懸命にエンジン音を口真似しながら……。
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by TONJIES | 2003-05-19 15:07 | 豚児1号 ケイタ
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