ガクとお散歩、その1
ガクをつれて犬の散歩に出かけるようになった。
「ガクー、散歩にいくかぁー?」
僕が声をかけると、ガクは何をやっていてもすばやく反応して玄関に向かい靴を履こうとする。
そう、3歳児にとってはTVやゲームの擬似的な体験よりも、外で自分の体を動かして遊ぶ方が楽しいはずだ。
ケイタの時も小さいころから一緒に散歩に出かけたけれど、水泳教室やサッカークラブ等で何かと忙しい兄に代わって、最近ではもっぱらガクを連れ出すようになった。
大きい犬と小さな子どもをつれて歩くのは楽しい。
でも、まだまだ3歳児のガクは道路を歩くのも危なっかしく、気持ちとしては犬のリードよろしくガクにも鎖をつけておきたいところだが、それでは世間から虐待のそしりを免れそうにもないので、左手に犬のリードを持ち右手でガクの手を引くようにしている。
道路上では車道と区切られた歩道であっても、僕はガクと必ず手をつなぐ。そして公園の中に入ったら自由に走り回って遊んでいいというのが僕たち二人の約束だ。
母親は少し心配しているが、「ガクちゃん、約束だよ。約束を守らないと散歩に連れて行かないよ」というとガクは自分から神妙に手をつないでくるようになった。今のところこの約束は堅く守られている。
ケイタがガクぐらいの時は走り出すと止まらなくて危なくてしょうがなかった。
ここに書いた文章を読み返して、言うことは聞かないし大変だったことを思い出した。それに比べると弟のガクはたぶんまだ外の世界に慣れていないせいなのだろうが、慎重だしあまり無鉄砲なことはしない。
車が来ようものなら遥か前方にいる時点から、「車だぁー」と道の脇によっていく。固まったまま、握っているガクの小さな手に力が入るのがわかる。
ガクの不安が伝わってくる、この小さな手のひらの感触をずっと忘れないだろうな、と僕は思う。