(ケイタ)
オナラの話
ケイタはオナラをした後、節をつけたような口調で、
「シィツゥ~レ~イ~」 と言う。
失礼と言っているのだが、ケイタが言うと何だか違う言葉のように聞こえてしまう。
歌うように、「シィツゥ~レ~イ~」と言っているケイタは何だかうれしそうだ。
「あれぇー、なんかくさいぞー」
夜寝る前に、母親とTVを見ていたときにケイタがそう言いだした。
僕はいなかったのでこれもカミサンから後で聞いた話なのだけど、この時カミサンは自分で音なしのオナラをしていたにもかかわらず、ケイタには分からないだろうと黙っていたらしいのだ。
「あれぇー、なんかくさいぞー」
「そう…臭いなんかする?」
カミサンがごまかそうとすると、どういうわけかケイタは自分のせいだと思い込んでしまったらしく、
「おかしいなぁー、オレ、オナラしたかなぁー」
と言いながら、しきりに振り返って自分のおしりの臭いを確かめていた。
あくまでシラを切ろうとしている母親が、犯人だとはケイタは思っても見なかったのだろう。もう眠くて少しボーっとしていて、自分がオナラをしたのか分からなかったのかもしれない。
「おかしいなぁー、オレ、オナラしたかなぁー」
そう何度も言うケイタに、おかしいのをこらえながらも、カミサンは黙ってとぼけていたという。
このォー屁こき嫁がぁー…