兄弟ゲンカ
ガクはただお兄ちゃんが好きなだけなんだ
ケイタが車を並べて遊んでいたり、折り紙を折ってひとりで遊んでいると、ガクがやってきてその邪魔をする。せっかくきれいに並べたトミカの街を壊されたり、折り紙をくしゃくしゃにされてしまい、お兄ちゃんとしては、自分にまとわりつく弟が一番うっとうしく思える瞬間だ。
自分のテリトリーへの侵入に許せないのか、時々、ケイタがいかりを爆発させている。
「ガクのバカッ!」
「ガクのバカチンコッ!」
というような罵声を幼いガクにあびせているのだが、ガクの方は怒られているということもわかっていないようで、ニイニイ(兄)が何で大きな声で怒鳴っているのかも解らずに、ポカンとした顔で兄を見ている。
「ガクはワザをお兄ちゃんの邪魔をしているんじゃないんだよ。ニイニイが面白そうなことをやっているから、自分もいっしょにやりたいだけなんだ。」
とケイタに説明した。
もっともケイタの方も感情を一時的に爆発させているだけで、あまり他意はないようだ。
しばらくすると、先ほどの罵詈雑言の罪滅ぼしのつもりか、いつものように、
「がくちゃーん、大好きだよー」といってガクの頬にすりすりして、さっきまでの剣呑な雰囲気はウソのようにガクにまつわりついていた。
ガクにとっては、怒っているニイニイも無理やりの抱擁してくるニイニイも、どちらも自分をかまってくれる嬉しい存在のようで、自分の相手をしてくれる兄がガクは大好きなのだ。
兄の後ばかりをついてまわっているガクと、時にはそれを疎ましく思ったり、反対に優しくしてあげたりしているケイタを見ると、兄弟なのだなぁーとつくづく思う。