(ケイタ)
綱登り
ファイトォー、一発ッ!
ケイタはこの頃、近所の児童公園にある綱登りや登り棒で遊ぶようになった。
ちょっと前まではこの手の遊びは怖がって出来なかったのに、一回できるようになると平気になってしまったようだ。それでもちょっと高いところや不安定なアスレチックはまだ少し怖いらしく、一緒に手をつないで遊んでいる。
なかでも丸太でつくった壁を縄を使ってよじ登るところがケイタのお気に入りみたいだ。
必ず「お父さんもやって」といって一緒に登る。
僕はこの手の遊びはもっとも得意とするところだけど、
わざと「お父さんは登れないようぅ~」と弱音をはいてみせると、先に登っていたケイタが手を差し伸べてきてくれる。
「おとうさん、これにつかまってッ!」
僕が本当につかまったら、二人の体重差からしてもケイタも落っこちてしまうのだが、ケイタは真剣な表情で、レスキューごっこ遊びに夢中になっているようだ。。
そんなふうに遊んでいる時、ケイタはTVCMのマネをして
「ファイットォーォォォオオー!」と僕に向かって叫ぶ。これに対して、下にいる僕は、
「イッパァーアアーツゥー!」と答えないといけないというお約束になっている。
綱の上から手を差し伸べるケイタ、気持ちとしてはロッククライミングでもしているつもりなのだろうか。
「おとうさーん、ファイトぉおおおー!」
「イッパーァァアーッツぅー」
公園の綱のぼりで、「ファイトォー、一発」は少し恥ずかしいのだが、ケイタはケインコスギのように真剣に大声で叫ばないと納得してくれないのだ。