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(ケイタ)
お友だちがみんな帰った後 近所に住んでいるケイタの友だちが数人家に遊びに来ていた。 外で遊んでいたお友達をケイタがしきりに誘って家の中に連れてきたらしい。 「ここが台所、こっちはお風呂…」と一生懸命に家の中の説明をしている。 お友だちが何人も家の中に上がってきたことがうれしいらしく、ケイタの声が大きく弾んでいた。 僕はこういう場面をあまり見たことがなかったので、ケイタの興奮した様子を面白く観ていた。 めいっぱいはしゃいで部屋中におもちゃをばら撒いてしばらく遊んでいたのだが、夕方になってお友達のお母さんが迎えにくると、ケイタは警戒して、 「もっと遊んでいてもいいでしょ」としきりに言っていた。 でも、一緒にあとかたずけをしてくれたお友達たちが一斉に帰ってしまうと、それまでのケイタのハイテンションが一気にしぼんでいった。 部屋の真ん中で脱力したように「へなへな」となってしまったケイタの目がみるみる涙で潤んできた。 「ケイタはもっと遊びたかったァ…」涙声でそういうケイタに、 「もう夕方だから、みんなお家に帰らないといけないし、ケイタもお風呂に入らないと…明日また一緒に遊べばいいよ…」と慰めると、 「嫌だァアアアアー」 と叫びだした。 おそらく、友だちがみんな帰ってしまって急に独りぼっちになってしまった「祭りの後」のような寂寥感に耐え切れないのだろう。 その寂しさをどうしたらいいのか、自分で自分の気持ちをもてあまして、怒り出して泣いているのだ。 泣き出してとまらなくなったケイタはこうなると手がつけられない。 泣いている自分に対する自己嫌悪もあるらしく、何を言っても、 「話しかけないでぇー!」「言わないでぇー」と怒っている。 自分が慰められることにさえプライドが傷つけられるのか、「明日も遊べばいいよ」と慰めても、 「それを言わないでェエエー」 「ケイタひとりになりたいんだぁーー」 「見ないでぇーー」 あげくの果てに泣き叫んで外に飛び出してしまった。 こういう時にはその話題には一切触れないで、放っておくしかないようだ。 しばらくするとケイタの気持ちもやっと治まったらしく、泣きやんで自分の気持ちを落ち着いて説明できるようになった。 夜、疲れて早めに寝てしまったケイタの寝顔を見ながらカミサンとその話をした。、 「夏休みで幼稚園のお友だちともあまり遊べないし、今日はよっぽど楽しかったんだろうね」 小さな子どもでも、その胸に様々な思いを抱いて生きている。 その小さな胸の中の切ない思いがいとおしく、いじらしいように感じられて、僕はケイタ寝顔をしばらく見ていた。
by tonjies
| 2004-08-28 14:49
| 豚児1号 ケイタ
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